椎間板ヘルニア
【概要】
犬では最も多い脊髄の病気です。脊椎(背骨)の間にある椎間板に過剰な力が加わることによりおきます。遺伝的に椎間板が硬くなっている場合や加齢により椎間板が疲弊している場合には、背骨に加わった力を椎間板が吸収できずに上に出てきてしまいます。椎間板が正常でも高所からの落下や交通事故などの強い衝撃により起きる場合もあります。
遺伝的にからり若い時期に内部の水分が減少して椎間板が硬くなってしまう犬種があります。ミニチュアダックスフント、ビーグル、シーズー、ペキニーズなどで軟骨異栄養性犬種と呼ばれています。これらの犬種では椎間板ヘルニアを発症する確率が非常に高く、比較的若齢(3~5歳)での発症が多く見られます。
主な症状は痛みと麻痺です。痛みはヘルニアを起こした部位で見られます。頸部の椎間板ヘルニアの場合には、首に触れると痛がる、首の筋肉を緊張させる、首を動かさなくなり上目遣いになる、といった症状で気づくことが多く、胸椎や腰椎の椎間板ヘルニアの場合には、抱いた時に痛がる、背中を丸める、背中を触れると嫌がる、などの症状がみられます。
足の麻痺が出るほか、膀胱が麻痺すると排尿できなくなり失禁したり、お腹を押すと尿が漏れるようになります。排便も自分の意思でできなくなり無意識で便が出てくるようになってしまいます。
【治療】
脊髄の圧迫が軽度であり麻痺の症状が軽い場合には、安静と鎮痛薬の投与による保存療法で治療します。根本原因の治療ではないため再発することがあります。
根本的な治療は脊髄を圧迫している椎間板の手術による除去です。脊髄損傷が重度で回復に時間がかかる場合には、リハビリテーションや圧迫排尿などによる排尿管理が必要となります。
脊髄のダメージが軽度であれば予後は良好です。重度の場合には足の麻痺や排尿障害などの後遺症が残る場合があります。痛みの感覚もなくなるような重い症状の場合には手術をしても改善しない場合があります。稀に進行性脊髄軟化症を併発する場合があります。この病気は脊髄障害が頭側に進行していきますが、有効な治療法がないため、最終的には呼吸麻痺により命を落としてしまします。