体表のできもの(結節・腫瘤・しこり)|浅草橋の動物病院は「あさくさばし動物病院」へ 年中無休

診療科目別症例紹介

皮膚・耳の病気腫瘍

体表のできもの(結節・腫瘤・しこり)

◉はじめに

 ご自宅でわんちゃんねこちゃんを撫でている時に偶然しこりを発見したことはありませんか?小さいから・痛がらないから・柔らかいから・本人は気にしてないから・大きさ変わらないから問題ないと言い切ることはできません。

 明らかに悪性度の高そうな場合、見た目などでできものが悪性腫瘍か予測できることもあります。しかし基本的に良性/悪性の判断は大きさ・見た目・硬さだけでは正確な判断はできません。また悪性腫瘍であっても年単位で小さいまま大きさが変わらないものもあります。

 

◉分類

できものを見つけた時は主に非腫瘍性のできもの・良性腫瘍・悪性腫瘍の3通りを想定します。

①非腫瘍性のできもの

炎症性肉芽腫や過誤腫など、腫瘍ではないできもの全般です。必ずしも手術を必要としません。種類によっては内科治療が適応になります。動物が気にしたり出血してる等の理由で手術する場合もあります。最小限の切除で取りきれます。

 

②良性腫瘍

良性腫瘍は転移をしない腫瘍を指します。命に直接関わらないことも多く、必ずしも手術を必要としませんが、①と同様の理由で手術する場合もあります。一般的に良性腫瘍の場合は最小限の切除で取りきれます。

 

③悪性腫瘍

悪性腫瘍は転移をする可能性があり、周囲の組織に浸潤しやすい腫瘍です。命に関わることも多々あります。腫瘍の種類によりますが、他に転移がない場合には手術が適応になるケース多いでしょう。腫瘍の周囲を最小限で切除すると取りきれないことが多いため、より広範囲での切除が推奨されます。種類によっては抗癌剤や放射線による治療を追加で行う場合もあります。

 

当院ではできものを見つけた場合は積極的に検査をお勧めしております。なぜならば、「どんなできものも見た目だけで悪性ではない」と決めつけることはできないためです。また、なるべく小さく初期の段階で悪性腫瘍を見つけられた方が治療の負担も少なく治療成績も良好です。

 できものを見つけたが、大丈夫だろうと様子を見ていたら短期間で何倍も大きくなり治療が大変困難になったり手遅れになっているケースもしばしば見受けられます。できものの診断には細胞形態の観察が必須です。できものから細胞を採取する方法はいくつかあります。当院では以下の検査を状況に合わせてご提案します。

 

◉検査方法

①細胞診

注射針をできものに刺して細胞を集め、顕微鏡で細胞の形態を観察する検査です。

  ・利点:鎮静や麻酔が必要ないことが多い(できものの場所や動物の性格による)

      動物に対する痛み・侵襲性(ダメージ)が最も小さい

      腫瘍の種類によっては細胞診のみで診断できることがある

      細胞ひとつひとつの形態の観察がしやすい

      比較的安価

  ・欠点:採取できる細胞の量が少ない

      できものの種類によっては細胞がとれず診断できない

      病変が小さすぎる(1㎜もない)と細胞がとれないことがある

 

②パンチ生検

穴あけパンチのような特殊なメスでできものを切り取り病理検査をします行います。細胞診のみでは診断困難と判断した場合に行います。

  ・利点:細胞診よりも多くの細胞を採取でき、細胞診で診断できないものも診断できる

      浅い病変をとる場合に適している

      比較的傷が小さい

      短時間で実施可能

      細胞診で取れないような小さいできものも診断できる

  ・欠点:麻酔・鎮静が必要なことが多い(場所による)

      細胞診よりも痛み・侵襲性(ダメージ)が大きい

      外注検査が必須

 

③コア生検

えんぴつの芯程度の太さの針でできものを切り取り病理検査をします。パンチ生検と組み合わせて実施することが多々あります。細胞診のみでは診断困難と判断した場合に行います。

  ・利点:細胞診よりも多くの細胞を採取でき、細胞診で診断できないものも診断できる

      深い病変をとるのに適している

      パンチ生検よりも傷が小さい

      短時間でできる

  ・欠点:麻酔・鎮静が必要なことが多い(場所による)

      細胞診よりも痛み・侵襲性(ダメージ)が大きい

      外注検査が必須

      できものが小さすぎると実施できない

 

 

 

 

 

 

 

④切除生検

できもの全てを最小限の大きさで切除して病理検査を行います。これはできものが非常に小さい場合や良性の可能性が高い場合に最初から選択する場合があります。

  ・利点:できものの全てを切り取るので最も診断精度が高い

      良性のできものであれば診断と治療が同時にできる

  ・欠点:全身麻酔が必要

      できものの大きさに比例して傷が大きくなる

      外注検査が必須

      悪性腫瘍で取りきれていない場合は再発する

 

◉なぜ最初から全て切除してしまわないのか?

 最初からできもの全てを切除してしまえばいいのでは?という疑問もあるかと思います。確かに良性のできものである見込みが強い場合には、全て切除してしまえば診断と治療が同時に可能であり手術は1回ですみます。

 しかし、悪性腫瘍の場合は肉眼的に確認できる部位以外にも腫瘍細胞が足を伸ばしていて周囲の組織に浸潤していることが多々みられますそのため、最小限の切除では腫瘍細胞を取り残してしまいすぐに再発してしまいます。

 転移のない悪性腫瘍は最初の手術で確実に取りきれたかどうかがその後の寿命や完治率に大きく影響します。また最初の切除が中途半端な場合、悪性腫瘍をさらに周囲に撒き散らすこともあり、再手術時に切除する範囲がわかりづらくなり難易度が上がります。

 このようなことから、悪性腫瘍か良性腫瘍かわかっていた方が前もって適切な切除範囲を決めることができます。そのため、腫瘍細胞を周囲に撒き散らさずに診断する方法として挙げた細胞診・パンチ生検・コア生検は非常に有用です。

 

 

◉まとめ

 以上が体表にできものを見つけた時の簡単なご説明です。わんちゃん猫ちゃんにできものを発見したら、まずは病院での診察をお勧めします。また、できものが小さなうちに気付くためには、日頃から体を撫でたりよく見てあげることも非常に大切です。コミュニケーションも兼ねて是非こまめに触ってあげましょう。なるべく小さいうちに診断・治療を行うことで治療の負担も軽く、QOLを維持しながら延命や完治も期待できます。

 

この記事は【腫瘍科担当獣医師 徳山】が監修しました