糖尿病|浅草橋の動物病院は「あさくさばし動物病院」へ 年中無休

診療科目別症例紹介

内分泌の病気

糖尿病

【概要】

犬の糖尿病はインスリンという血糖値を下げるホルモンが膵臓から出なくなることにより起こることが多いです(I型糖尿病)。他にも、クッシング症候群や膵炎に併発することや、未避妊の雌犬に発生する性ホルモン関連性などが報告されています。I型糖尿病では、膵島β細胞の破壊により、インスリンの分泌能が低下し、糖の細胞内への取り込み能力が低下することで、血糖値の上昇や尿糖が認められます。

猫の糖尿病はインスリン抵抗性の増大に伴うものがほとんどです(Ⅱ型糖尿病)。他にも、先端巨大症、クッシング症候群、膵炎などに併発することが報告されています。Ⅱ型糖尿病は、人では生活習慣病と言われているように、猫でも肥満、運動不足などの関連が報告されています。また遺伝子の異常や、膵臓のアミロイド沈着の関連も報告されています。これらにより、インスリンの効き具合が悪くなり(インスリン抵抗性)、血糖値の上昇や尿糖が認められます。

【臨床症状】

・多食、多飲多尿、体重減少、活動性低下

・犬では白内障が急速に発生することがあります。過去の研究では半年で約60%の糖尿病犬に白内障が発生したとの報告もあります。これは糖尿病のコントロールの良し悪しに関わらず発生するとされています。

・猫では歩様異常が認められることがあります。糖尿病による末梢神経障害により、踵をつく歩き方が特徴的です。これは慢性的な経過を示唆しており、インスリン治療を開始しても戻らないことがほとんどです。

【診断基準(ALIVE criteria)】

犬:

①臨床症状を満たし、かつ空腹時または食後の血糖値 >200mg/dl(症状が合致しない場合や、ストレス性の高血糖が予測される場合は再検査)

②症状の有無によらず、空腹時血糖値126-200mg/dlがストレスの関連なく24時間以上持続、または糖化タンパク質が高値。

猫:

①臨床症状があり、空腹時または食後の血糖値 >270mg/dl。また下記の基準の1つ以上を満たす。

・糖化タンパク質の高値

・尿糖の検出(ストレスの関連を否定)

②空腹時の血糖値125-270mg/dlで、かつ下記の基準の2つ以上を満たす。

・糖尿病に合致する臨床症状

・糖化タンパク質の高値

・尿糖の検出(ストレスの関連を否定)

【治療】

動物の糖尿病では、血糖値の厳密なコントロールより、臨床症状の改善や低血糖を起こさないことを目標に治療していくことが多いです。人では糖尿病性腎症や網膜症といった重大な併発症が報告されていますが、動物ではこれまでの研究で糖尿病とこれらの併発症の関連が証明されておらず、むしろ否定的であるという報告が多いです。また、動物はストレスにより血糖値が上昇しやすいため(特に猫)、院内での3時間毎の採血による血糖曲線の作成は、家での状態を反映しない可能性があります。そのため、血糖曲線の作成を厳密に行う必要はなく、臨床症状の改善が目標とされています。

犬のI型糖尿病では、β細胞が破壊され、インスリンの分泌量が足りないために、インスリンを注射で投与します。一般的に用いられるのは中間型に分類されるNPHやlenteと呼ばれるものになります。犬の性格的に、ストレスのない血糖曲線の作成が可能であれば、定期的に検査を行い、臨床症状の改善および血糖値80-250mg/dlを目標としてインスリン用量の決定を行います。また、インスリンの不足を補うために、経口血糖降下薬(アカルボースなど)や、食事療法(高繊維食など)も併用することがあります。

猫のⅡ型糖尿病は、前述のように肥満や運動不足によるインスリン抵抗性が関連するため、食事療法(低血糖、高タンパク)やインスリンの投与を行います。猫は1日かけてゆっくりご飯を食べる子もいるため、インスリンは長時間作用型と呼ばれる薬のピークがない種類のものを使用します(グラルギン、デテミル、プロジンクなど)。猫は特にストレスを感じやすいため、寛解を目指す積極的な治療以外では、血糖曲線を作成しないことが多いです。その代わりに、過去1-2週間の血糖値を反映するとされるフルクトサミンを測定することもあります。血糖値を細かく追うよりは、臨床症状の改善を主体に治療を行っていきます。

インスリンの過剰投与による低血糖の症状(元気低下、運動性低下、ふらつき、震え、発作など)には十分に注意する必要があります。

上述の膵炎、クッシング症候群、先端巨大症などが併発している場合には、そちらの治療も実施します。

【予後】

犬の場合、インスリンを分泌するβ細胞が破壊されているため、多くの場合は生涯のインスリン治療が必要となります。

猫の場合、糖尿病に対して早期の治療介入ができれば、寛解する可能性もあります。その場合、インスリン以外の薬剤を使用することもあります。

インスリンの過剰投与による低血糖の症状(元気低下、運動性低下、ふらつき、震え、発作など)には十分に注意する必要があります。