マラセチア性皮膚炎
【概要】
マラセチアは犬の皮膚の表面に元々生存する真菌(カビの一種)です。このマラセチアが異常増殖することにより皮膚に痒み・赤みが生じます。特に症状が出やすい場所は、口周り・耳・首の腹足・腋の下・下腹部・内股・指の間・会陰部などで(下図を参照)、夏場には悪化する傾向があります。マラセチアは皮膚に元々存在する常在菌なので、根本的治療にはなぜ異常増殖してしまったのか原因を突き止めることが大切です。背景に、アトピー性皮膚炎・食物アレルギー性皮膚炎・脂漏症・ホルモン分泌異常(甲状腺機能低下症・クッシング症候群など)などが潜んでいることがあり、繰り返す場合にはこれらの病気がないか確かめる必要があります。
好発犬種
ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア、コッカースパ ニエル、プードル、ダックスフンド、ボクサー、キャバリア・キングチャールス・スパニエル、シー・ズー、ジャーマン・シェパード・ドッグなど
【診断】
皮膚の症状と皮膚検査(テープによる皮膚検査)及び治療への反応を見て総合的に判断します。
マラセチア(雪だるまのような形:写真矢印)が写真のように多数いる場合はマラセチア性皮膚炎の可能性を考慮して治療を行います。
【治療】
①塗り薬
塗り薬を患部に塗る方法です。すぐに舐めとってしまう場合は散歩やご飯や遊びなどの直前に塗ると気を紛らわせることができます。患部が比較的狭い場合に用います。
利点:全身的な副作用が出にくい
簡単
欠点:範囲が広い場合は塗布が困難
塗り薬を嫌がる場合がある
②シャンプー
薬用のシャンプーを用いる方法です。日常的にも使用することができます。
利点:全身的な副作用が出にくい
欠点:シャンプーの手間
③飲み薬
内服を飲ませる治療です。飲ませるだけで全身的に広がるので手間が掛かりません。
利点:全身的に効く
欠点:肝臓などに負担がかかることがある
※上記の①~③の治療は適切な用法・用量・治療期間を守らないと薬剤耐性菌を作り出してしまい、治療がより困難になる場合があります。
④基礎疾患(原因となる病気)の治療
上記①~③までの治療で良くならないもしくはすぐに繰り返すなどの場合は、原因となる基礎疾患が隠れている場合があります。基礎疾患を見つけ出しその治療をすることによりマラセチア性皮膚炎の治療につながることもあります。
今までの経過・年齢・皮膚以外の症状、検査所見などから総合的に判断し、(削除;上記治療を組み合わせたり、原因となっている病気の検査を行った上で)治療を進めていきます。飼っているわんちゃんに痒みや気になる皮膚症状がみられる場合には是非ご相談ください。